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どれから聴くかガイド

以下はサイト主の個人的な趣味とは別に、これからビーチ・ボーイズを聴く方のためにおすすめしたいCDを紹介します。
わりと当たり前のチョイスになっていると思います。

 1.ベスト盤
 2.オリジナル・アルバム(厳選5枚)
 3.オリジナル・アルバムを順に聴く



1.ベスト盤

まずはベスト盤だけで済ませたい方へ。

ビーチ・ボーイズはもう、やたらとベスト盤が出ている印象がありますが、とりあえず1枚でビーチ・ボーイズの歴史と魅力を俯瞰できるベスト盤は……ないです。無理。

サイト主のおすすめは、やはり 『グレイテスト・ヒッツ』 の1〜3ですかね。この3枚は、各アルバムから選んだ曲をほぼ収録順に並べただけというものですが、ビーチ・ボーイズの歴史をうまく3つの時期に分けていると思いますので。

赤、緑、青のジャケットが目印です。

     

『グレイテスト・ヒッツ1 1962〜1965』
 Greatest Hits 1 1962-1965

 1. Surfin' Safari /2. 409+/3. Sarfin'+
   『サーフィン・サファリ』('62)から
 4. Surfin' U.S.A. /5. Shut Down
   『サーフィンU.S.A.』('63)から
 6. Surfer Girl /7. Little Deuce Coupe /8. In My Room
   『サーファー・ガール』('63)から
 9. Be True Your School[Single Version]/10. Cherry Cherry Coupe+/11. Spirit Of America+
   『リトル・デュース・クーペ』('63)から
 12. Fun, Fun, Fun[Single Version]/13. Why Do Fools Fall In Love[Album Version]/14. Don't Worry Baby 
  /15. The Warmth Of  The Sun+
   『シャット・ダウン Vol.2』('64)から
 16. I Get Around /17. All Sunner Long+/18. Little Honda /19. Girls On The Beach+
   『オール・サマー・ロング』('64)から
 20. Dance, Dance, Dance /21. Do You Wanna Dance /22. She Knows Me Too Well+/23. Please Let Me Wonder
  /24. Kiss Me Baby
   『トゥデイ』('65)から
 25. Help Me Rhonda[Single Version]/26. California Girls /27. Girl Don't Tell Me+
   『サマー・デイズ』('65)から
 28. The Litte Girl I Once Knew
   シングル('65)
 29. There's No Other+/30. Barbara Ann
   『パーティ』('65)から


赤いジャケットのベスト盤。サーフィン・バンドとしてデビュー、海や車を題材にした爽快なナンバーで人気を得て、音楽的改革と深化により唯一無二のビーチ・ボーイズ・サウンドを確立した時期。一般的にはビーチ・ボーイズといえばこの時期です。この音楽的な密度の濃さにそのことを当然と思うと同時に、一方で不幸であったとも思います。
始めの数曲のわりと単純な音構成から、26や28などの偏執的なスタジオ・ワークに至るまでの変化をバッキングに注目しながら聴いて下さい。

※このベスト盤は、2000年の初回発売時(TOCP-0201)には20曲入りでしたが、2001年以降の再発(TOCP-65727、TOCP-53634)では30曲入りに増えているのでご注意下さい(曲名の後に+が付いているのが追加曲)。



『グレイテスト・ヒッツ2 1966〜1969』
 Greatest Hits 2 1966-1969


 1. Wouldn't It Be Nice /2. You Still Believe In Me+/3. Don't Talk+/4. Sloop John B /5. God Only Knows /
 6. I Just Wasn't Made For These Times+/7. Caroline, No
   『ペット・サウンズ』('66)から
 8. Good Vibrations /9. Heroes And Villains /10. You're Welcome+/11. Gettin' Hungry
   『スマイリー・スマイル』('67)から ※10は9のシングルB面に収録
 12. Their Hearts Were Full Of Spring+
   ライブのリハーサル('67/8/25) ※『ワイルド・ハニー』CD化の際にボーナス・トラックとして発表された
 13. Wild Honey /14. I Was Made To Love Her+/15. Darlin' /16. Here Comes The Night
   『ワイルド・ハニー』('67)から
 17. Friends /18. Be Here In The Morning+/19. Wake The World /20. Busy Doin' Nothin'+
   『フレンズ』('68)から
 21. Do It Again[Single Version]/22. Bluebirds Over The Mountain[Album Version]/23. I Can Hear Music
  /24. All I Want To Do /25. Cotton Fields(The Cotton Song)[Album Version]/26. Time To Get Alone
   『20/20』('69)から
 27. Celebrate The News /28. Break Away
   シングル('69) ※28がA面


緑のジャケットのベスト盤。ブライアンの音楽的挑戦の成果として満を持して発表した 『ペット・サウンズ』 の商業的失敗(それまでのビーチ・ボーイズのレベルとしては、ですけど)のあと、アメリカでは見る見るうちに「時代遅れのサーフィン・バンド」になってゆく中、必死に方向性を模索していた時代。
ブライアンの不調をカバーするべく、各メンバーが作曲やプロデュースに乗り出し、『20/20』 や後に再評価された 『フレンズ』 などの佳作を作り出しました。
個人的にはここから70年代半ばまでの混迷の時期にとても思い入れがあり、私にとってはこの時期があったからこそのビーチ・ボーイズなのです。

※このベスト盤は、2000年の初回発売時(TOCP-0202)には20曲入りでしたが、2001年以降の再発(TOCP-65728、TOCP-53635)では28曲入りに増えているのでご注意下さい(曲名の後に+が付いているのが追加曲)。



『グレイテスト・ヒッツ3 1970〜1986(ベスト・オブ・ブラザー・イヤーズ) 』
 Greatest Hits 3:Best Of The Brother Years 1970-1986

 1. Add Some Music To Your Day /2. Susie Cincinnati /3. This Whole World /4. Tears In The Morning
   『サンフラワー』('70)から ※2はこの時期の録音だが発表されたのは 『15ビッグ・ワンズ』('75)
 5. Long Promised Road /6. 'Til I Die /7. Surf's Up
   『サーフズ・アップ』('71)から
 8. Marcella
   『カール・アンド・ザ・パッションズ−ソー・タフ』('72)から
 9. Sail On, Sailor /10. The Trader /11. California Saga(On My Way To Sunny Californ-i-a)[Single Version]
   『オランダ』('73)から
 12. Rock And Roll Music[Single Version]/13. It's OK[Single Version]
   『15ビッグ・ワンズ』('76)から
 14. Honkin' Down The Highway
   『ラヴ・ユー』('77)から
 15. Peggy Sue /20. Come Go With Me
   『M.I.U.アルバム』('78)から
 16. Here Comes The Night[Edit Version]/17. Good Timin' /18. Sumahama
   『L.A.(ライト・アルバム)』('79)から
 19. Goin' On
   『キーピン・ザ・サマー・アライヴ』('80)から
 21. Getcha Back
   『ビーチ・ボーイズ』('85)から
 22. California Dreamin'
   ベスト盤 『MADE IN U.S.A.』('86)で発表

青いジャケットのベスト盤。70年代から80年代半ばのアルバムから選曲。試行錯誤の続いた70年代前半と、1974年のベスト盤 『終りなき夏(Endless Summer)』 による60年代の作品のリバイバル・ヒット以降、「夏」や「海」といったパブリック・イメージを受け入れつつ「アメリカン・バンド」として生き延びてきた時期。

1963年の「Surfin U.S.A.」と1971年の7.「Surf's Up」。このギャップと音楽的な幅。人によりそれぞれでしょうが、私にとってのビーチ・ボーイズの魅力はここにあります。


他に、1989年のナンバー1ヒット「Kokomo」と2012年の最新アルバムからのシングル・カット「That's Why God Made The Radio」も押さえておくなら2012年のベスト盤 『グレイテスト・ヒッツ』 を加えるのがいいと思います。
 



2.オリジナル・アルバム(厳選5枚)

60年代から現在までたくさんのアルバムを作ってきたビーチ・ボーイズですが、やはりアルバムごとに顔があります。
ベスト盤を聴いて「けっこう好きかも」と思ったらオリジナル・アルバム単位で聴いてみて下さい。

でも、いきなり全部を順に聴ける方は別にして、聞く順番と言うのは結構重要ですので(これを誤ったためにビーチ・ボーイズに興味を持つに至らなかったという例は多々報告されております)、サイト主が厳選した5枚をご紹介します。

 『オール・サマー・ロング』('64)
 『トゥデイ』('65)
 『サンフラワー』('70)
 『ペット・サウンズ』('66)
 『フレンズ』('68)



まず、1964年の 『オール・サマー・ロング』。それまでの5枚のアルバムで展開してきた海と車についての世界の総まとめといった感のあるアルバムで、強力な「I Get Around」や「Little Honda」と、バラードの「Girls On The Beach」などがバランス良く並んでいます。サーフィン/ホットロッド・ミュージックとしてのビーチ・ボーイズを押さえるためにおすすめです。

1965年の 『トゥデイ』 はアルバムの片面がビートの効いた動的な曲、裏面がバラード系の曲というわかりやすい構成を持った1枚で、演奏やコーラスのアレンジに一歩前進したものを感じます。
バラード曲のコーラスが随分と複雑になってきており、音楽面でより高みに立とうとするビーチ・ボーイズの姿が記録されています。

次は 『ペット・サウンズ』『スマイル』 時代もすっ飛ばして1970年の 『サンフラワー』 です。60年代の終わりとともにアメリカでは過去の人扱いになっていたビーチ・ボーイズが、70年代の初めに放った傑作で、ビーチ・ボーイズは単なる夏の風物詩なのかどうかの答えがここにあります。優れたポップ/ロック・ミュージックを作る音楽家集団としてのビーチ・ボーイズを楽しめます。

さて、いよいよ「ロック界最高のアルバム」などにも選ばれる1966年の 『ペット・サウンズ』 です。もちろん5枚の内に入れないわけにはいきませんが、私としてはいきなりこれを聴くのではなく、上の3枚を先に聴いて欲しいと思っています。
確かにビーチ・ボーイズのコーラスはありますが、どちらかというとブライアンのソロ・アルバムに他のメンバーが参加したといった感じのアルバムで(録音の経緯が実際にそうだったわけですが)、私も全曲をそらんじるほど好きになるまでには少し時間がかかりました。
それまでのビーチ・ボーイズの音楽の文脈では理解できないけれど、一人の青年の心象風景として捉えると、すべての音と詩がつながる瞬間が来ると思います。
もちろん人により好みは様々ですから、他のアルバムはピンとこなくても 『ペット・サウンズ』 だけは例外という方もいるかもしれません(いるのかな…)ので、こんなアドバイスをしたくなるアルバムだということを念頭に置いて、あえて最初に聴いてみるのもいいかもしれません。
とりあえず、ロック的な「カッコ良さ」とは無縁の作品ですので、そういうことは期待しない方がいいでしょう。

最後の1枚は1968年の 『フレンズ』 を選びました。ビーチ・ボーイズは万人に受けるノリのいい曲や美しい曲を作るだけではなく、「ヘンなコーラスのついたヘンな曲」を作るグループという一面があります(笑)。ビーチ・ボーイズの世界とあまり関係ないような前衛的ミュージシャンが意外と彼らのファンだったりするのは多分そのせいです。
「ヘンなコーラスのついたヘンな曲」の詰まったアルバムの最右翼としては 『スマイリー・スマイル』 があるのですが、もう少し普通に楽しめるアルバムとして、この1枚でアナザー・サイド・オブ・ビーチ・ボーイズを体験して下さい。

なお、現在日本では各アルバムが単独でCD化されていますが、輸入盤では 『オール・サマー・ロング』 は 『リトル・デュース・クーペ』 との2イン1仕様、『トゥデイ』『サマー・デイズ』 との2イン1仕様、『サンフラワー』『サーフズ・アップ』 との2イン1仕様、『フレンズ』 は 『20/20』 との2イン1仕様になっており(かつては日本でも 『サンフラワー/サーフズ・アップ』 以外はその仕様で出ていた)、どのアルバムもビーチ・ボーイズの作品の中では良い出来なので、費用対効果を考えると輸入盤を購入した方がいいかもしれません。



3.オリジナル・アルバムを順に聴く

最後に、全オリジナル・アルバムを聴こうと思った方のために、各アルバムについて簡単な解説をいたします。ただしヒット・チャート的な知識(どれが何位だったとか)があんまりないので、そういう視点の欠落した解説になります。

『サーフィン・サファリ』('62)と 『サーフィンU.S.A.』('63)はそれぞれ「Surfin' Safari/409」と「Surfin' U.S.A./Shut Down」といった強力なナンバーを中心に、エレキ・インストなどを交えたサーフィン・バンド然とした内容。

『サーファー・ガール』('63)は「Catch A Wave」や「Little Deuce Coupe」などの軽快な曲と「Surfer Girl」や「In My Room」などのバラードという、ビーチ・ボーイズの魅力を形作る2つの要素がはっきりと現れた初期の快作。

『リトル・デュース・クーペ』('63)は車をテーマにしたアルバムで、『サーファー・ガール』 の1ヵ月後という短時間でのリリースであるためか、前の3枚から4曲が再度収録されています。その意味では穴埋め的なインストがなく、最初に聴くのにいい1枚かもしれません。上の5枚を選ぶ際に、これと 『サーファー・ガール』『オール・サマー・ロング』 のどれを入れるか迷いました。

『シャット・ダウン Vol.2』('64)も車をテーマにしたアルバムで、1963年にアルバムを3枚も作らされたというのに、「Fun, Fun, Fun」「Don't Worry Baby」「The Warmth Of The Sun」「Keep An Eye On Summer」といった名曲が出てきます。恐ろしやブライアンの才能。明らかに穴埋め用のトラックがいくつかあるのが残念。ちなみに 『Vol.1』 に当たるのはビーチ・ボーイズと他のホット・ロッド・グループの曲を収録した 『シャット・ダウン』 というオムニバス盤。

『オール・サマー・ロング』('64)はここまでのサーフィン/ホットロッド時代に一区切りを付けるアルバムで、何といっても「I Get Around」が強力です。ジャケットも中身も「永遠の夏」という言葉を連想させる1枚で、夏の開放的な楽しさと過ぎ行く夏の寂しさを感じさせる楽曲群には「人生の夏の時期」を重ね合わせることが可能な感じがします。

企画もの 『クリスマス・アルバム』('64)をはさんで出た 『トゥデイ』('65)は新たな局面に乗り出したアルバム。楽器やコーラスの複雑なアレンジと一般的な聴きやすさを両立した1枚。アナログB面(CDだと7〜12曲目)のバラードが名曲ばかり。

『サマー・デイズ』('65)はさらにバッキングに凝った曲が並び、その象徴が3分ポップとしては前代未聞の壮大なオーヴァチュアが付いた「California Girls」。これと 『ペット・サウンズ』 の曲はカラオケ・バージョンで聴いても充分楽しめます。ただ、こり過ぎで少しおかしな方向へ行く一歩手前のような感じもなきにしもあらず。

『パーティ』('65)はクリスマス商戦で売れる商品を欲しがるキャピトルの要請に応えて作った企画もの。メンバーと家族のホーム・パーティのライブ録音という設定のアルバム。それでもここに収録された「Barbara Ann」のカバーが大ヒットして、コンサートのクライマックスを飾る重要なライブ・レパートリーになるのだから、世の中わからんもんです。

『ペット・サウンズ』('66)はブライアンがスタジオにこもって完成させたバッキング・トラックに、ツアーから帰ったメンバーが歌入れして作られた、ほとんどブライアンのソロ・アルバム。うねうねするメロディと不思議な耳ざわりの演奏に「?」となり、最初に聴いた後しばらく聴かない時期がありましたが、ある時「ああ、そういうことなのか」とすべてが氷解しました。抽象的な表現で申し訳ありませんが、どこが良いのかを言葉で表そうとすると、「な、ここの楽器の音、な、ここのコーラス、な、この電車の音、な、わかるだろ?」という風になってしまう、そういうアルバムです。

『スマイリー・スマイル』('67)は大ヒットした「Good Vibrations」と続くシングルの「Heroes And Villains」を柱に、『スマイル』 というアルバムを作るために録音したけれど完成できなかった曲を再録音して作ったアルバム。
シングルの2曲以外はほとんどコーラスだけでできたデモみたいな曲ばかりで、おそらくほとんどの人が「なんじゃこりゃ」という感想をもらすでしょう。でも今は 『ペット・サウンズ』 とこのアルバムの間にブライアンのソロの 『スマイル』('04) をはさんで聴くことができるので、また違った感覚で聴けるのではないでしょうか(2011年に出たビーチ・ボーイズ名義の 『スマイル』 もありますが、あちらは未完成のままのリリースなので…)。
私は 『ペット・サウンズ』 とこれを一緒に聴いて、こっちはすぐに気に入りました。もちろん大傑作とか思ったわけじゃありませんが。

『ワイルド・ハニー』('67)はR&B好きなカールがリードして作られたアルバムで、全体的にネバっこいノリが特徴。当然彼らはヒット・チャートに入るアルバムを作ろうと思ったんでしょうが、力強い「Darlin'」以外はどの曲もどこかおかしな雰囲気が漂っています(そこが魅力です)。

『フレンズ』('68)はサイケ・ポップ・アルバムともいうべき1枚ですが、決しておどろおどろしいサウンドではなく、やけに落ち着く曲が多いアルバムです。これまでのビーチ・ボーイズが夏の屋外のサウンドトラックだとすれば、これは同じ夏でも冷房の効いた部屋で静かにしている印象です。
ブライアンの状態が不安定になってきたのか、メンバーの共作曲が増えています。

この後、カラオケを集めた 『スタック・オー・トラックス』('68)というアルバムが出ますが、これは契約の穴埋めアルバムと見過ごすには惜しい1枚です。特に、『サマー・デイズ』『ペット・サウンズ』 収録曲のバッキング・トラックの、ボーカルで隠れてしまっている音が聴けるのが興味深いところ。
このアルバムに収録されている「Here Today」が、私に再び 『ペット・サウンズ』 と対峙するきっかけを作ってくれました(現在は 『ペット・サウンズ・セッションズ』 で全曲のカラオケが聴けますが)。

『20/20』('69)はどんどん引っ込んでいくブライアンの代わりに各メンバーが積極的に音作りに関わり出し、ある程度の成果が現れた1作。モータウンのカバー「I Can Hear Music」から 『スマイル』 収録予定だった「Cabinessence」まで、寄せ集め的ではあるけれど魅力のある楽曲が詰まったアルバム。
作曲面でもブルースや前作で初めて自作を提供したデニスが単独で作曲した曲が収録されています。

『サンフラワー』('70)はキャピトルを離れたビーチ・ボーイズが逆境にめげずに作り上げた傑作。「ひまわり」というタイトルといい陽光あふれるジャケット写真といい、内容によく合っています。各メンバーが力を出し合ったという点で、「グループとしての最高傑作」と言えるでしょう。ビーチ・ボーイズがブライアンの才能だけで成り立っているわけではないことを証明する作品。でもセールス的には大失敗だったそうです。

『サーフズ・アップ』('71)は前作と対称的に、実験的なサウンドと陰りのある楽曲が多い作品。『スマイル』 収録予定だった「Surf's Up」を新作アルバムのメインにしなければならなかったほどで、前作に比べると見劣りがするのは事実ですが、不思議と統一感のあるアルバムになっていると思います。
『20/20』 から素晴らしい曲を提供してきたブルースがここでも稀代の名曲「Disney Girls」を発表していますが、当時のマネージャーと衝突した彼は、このアルバムを最後に一時グループを離れてしまいます。

『カール・アンド・ザ・パッションズ−ソー・タフ』('72)は南アフリカ出身の2人のメンバーを加えて「カール・アンド・ザ・パッションズ」として出したアルバム(でも 『ペット・サウンズ』 との2枚組で出たのであんまり名前を変えた意味がなかったけど)。私は他のアルバムと同じくらいこのアルバムが好きなんですが、一般的には「こんなのビーチ・ボーイズじゃない」と言われてる1枚です。

『オランダ』('73)は引き続き新メンバーとともに、タイトル通りオランダに機材を持ち込んで滞在しながら作ったアルバムで、アーシーというのかホコリっぽいというのかシリアスというのか辛気臭いというのか、そういうところが魅力の作品。どの曲もよく作り込まれていると思いますが、やはり一般的には「ビーチ・ボーイズらしさが希薄」ということになるんでしょう。
ブライアンが持ってきたけど誰もアルバムに入れる気にならなかったのでオマケのシングルに収録された音楽童話「ヴァーノン山と小道」がCD化の際に一緒に収録されました。
『ペット・サウンズ』 の商業的失敗以降、混迷を続けていたビーチ・ボーイズの暗黒時代も、この翌年にキャピトルから出た60年代の曲のベスト盤が大ヒットすることで終りを告げます(といってもこれ以降もすべてがうまくいったわけではありませんが)。

『15ビッグ・ワンズ』('76)はその好機を逃すまいと、不調のブライアンを全面復帰させようとしたのはいいが、アルバムの半分はオールディーズのカバー、オリジナル曲も過去の未発表曲だったり完成度の低い曲だったりした1作。「It's OK」とか「Had To Phone Ya」とか好きな曲もあるんですけどね。
あの声はどこに行ったんだというくらいブライアンの声が変わってます。

『ラヴ・ユー』('77)は本当にブライアンが復帰して作った1枚。特にアルバムB面(CDだと8〜14曲目)はブライアンの私小説的世界が展開しており、特にブライアンが好きなファンからは絶大な評価を受けている1枚。かけると全曲歌っちゃうし、好きなアルバムではあるんですが、シンセ主体で作られたペラッとした(というかボヨ〜ンとした)サウンドのバッキングが、今となってはもうひとつな感じも(「シンセを見事に使いこなしている」と評する人もいるわけですが)。

『M.I.U.アルバム』('78)はアルと友人のロン・アルトバックがプロデュースして作られた1作で、楽曲・アレンジともに良い出来の爽快なアルバム。復活後のビーチ・ボーイズのアルバムでは文句なくベスト。

『L.A.(ライト・アルバム)』('79)は、またブライアンの調子が悪くなったため呼び戻されたブルースがプロデュースしたアルバム。個々の曲は魅力的なものが多いし、うまくプロデュースされているとは思いますが、各人がソロで録った作品を集めたようなチグハグな感じもしてしまいます。
ここに収められている「Here Comes The Night」のディスコ風リメイクをボロクソに言う人も多いわけですが、私は好きです。

『キーピン・ザ・サマー・アライヴ』('80)はタイトル通り往年のイメージである「夏」を全面に押し出した、開き直ったかのような内容のアルバムで、引き続きブルースがプロデュース。そのベタな感じに拒否反応を示す人も多いわけですが、私は好きです。
ブライアンのからんだ曲は総じて高レベルだし、カール作の2曲や「School Days」のカバー、味わい深いブルース作の「Endless Harmony」もいいアクセントになっていると思います。
この作品にほとんど関わらなかったデニスは、1983年に帰らぬ人となってしまいました。

『ザ・ビーチ・ボーイズ '85』('85)はイギリス人のスティーヴ・レヴィンにプロデュースを任せたアルバムで、メンバー以外のペンによる新曲も取り入れ、新しい展開を図ろうとした作品。いかにも80年代っぽいデジタル・サウンドは好き嫌いの分かれるところでしょうが、ビーチ・ボーイズらしい豊かなコーラスはちゃんと楽しめます。

『スティル・クルージン』('89)は、4曲の新曲の他は、前年に大ヒットした「Kokomo」など映画の挿入歌(という名目で60年代の曲も収録)やシングルで発表済みのものという、オリジナル・アルバムというには厳しい内容。
前年にブライアンが本格的にソロ・デビューをしました。

『サマー・イン・パラダイス』('92)は「Kokomo」のヒットで発言権を大きくしたと思われるマイク主導で作られたアルバムで、ブライアンは不参加。あまりにもマイク以外のメンバーの存在感が薄いのが難ですが、個人的にはそれほどひどい内容とは思えません。数曲に手を入れ直したイギリス盤はその点が多少改善されています。

『Stars And Stripes Vol.1』('96)はウィリー・ネルソンなどカントリー畑の歌手と一緒にナッシュビルで録音したセルフ・カバー・共演アルバム。ブライアンを含めたメンバー全員が参加しました。企画ものなのが寂しいところですが、全員が楽しんで作った作品であることは伝わってきます(録音の様子はDVD 『ナッシュビル・サウンズ』 で見ることができます)。
『Vol.2』 は出ていません。

この後、1998年にカールが他界、マイクと対立したアルが事実上脱退し、ビーチ・ボーイズはマイクとブルースを中心に再編され、ソロのブライアンと3派に分かれて活動することになりました。
2006年には過去のライブ音源とそれぞれのソロ作品を持ち寄った 『Songs From Here & Back』 がビーチ・ボーイズ名義で出ましたが、本当の意味でオリジナル・アルバムと呼べる作品が出ない状態がしばらく続きます。

そして、結成50周年の2011年の終りに、現存するオリジナル・メンバーによるリユニオンが発表されました。まずは1969年のアルバム 『20/20』 に収録の「Do It Again」の再録音を行い、2012年にはニュー・アルバム 『ゴッド・メイド・ザ・ラジオ〜神の創りしラジオ』 の発売と、ライブ・ツアーが行われました。


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